Since 1997/06/07
TOP PAGE
書籍寸評

ご意見ご要望はこちらへ:takuchip@greensoft.co.jp

書籍寸評(10) 2000年04月以降

 買い置きの本が無くなり、本屋にも行く時間がなかったため、2日間ほど本を読む事が出来なかった。1日当たりせいぜい30分程度の読書時間しかとれないのだけれど、これが結構辛かった。たった2日間だけど。こうなるともう排泄と一緒だな。読めないとなるととても苦しい。

  • 「突破者の痛快裏調書」 宮崎学、徳間書店、1500円

     オウムとグリコ森永事件についてはこの著者の本を何冊も読んでいるとあまり新鮮味がないが、警察をはじめとする当局やマスコミ、市民団体などにふれている章は面白い。いわゆる裏側から見た権力社会に対する批判的な目は、どうも世間一般の目とかなり共通する部分があるように思える。その辺の感覚が興味深い。
    (お勧め度:70/100)2000/09/03登録

  • 「椎名林檎 歌姫物語」 吹上流一郎、コアハウス、1100円

     この類の本はまず読まない。昔、椎名誠が怒っていたけど、この本も背には「椎名林檎 歌姫物語」とあり、その下に帯のようなデザインで「ロックの新星誕生の奇跡」とあって、その下に以上に小さな活字で著者の名前と出版社名が書かれている。棚に立てられていれば椎名林檎が著者と勘違いしてしまう。
     徹底取材とあるが、間違いが多いのですよね、P39だけでも2カ所(美保→三保、榛原市→榛原町)ある。たまたま私の知っている地域なのだけれど、全体見たらどうなのか。どうしてこううさんくさいのだろうか。
     それはそれとして、椎名林檎ってやっぱりすごいですね、あらためて。「無罪モラトリアム」何度聞いたかわからない。すごいなあ。すごいなあ。すべてが。
    (お勧め度:50/100)2000/08/12登録

  • 「BAND OF THE NIGHT」 中島らも、講談社、1800円

     中島らもの小説です。帯の「あーあ、やっちゃった」は真実か。ここまで薬漬けの小説は読んだことがありません。溢れてくる言語の数々、すごい精神構造の描写である。映像に出来ない、活字ならではの表現、リアルである。
     ところどころで実物の中島らもとイメージが重なり、過去の小説ともクロスし、重いどろっとしたストーリにどっぷりと浸かってしまう。逸品である。
    (お勧め度:95/100)2000/08/12登録

  • 「無間地獄」 新堂冬樹、幻冬社、1800円

     闇金融、怖いですね、この本に書かれている内容ってタイトルどおりで、まさに地獄、暗黒の世界です。カバーの写真も怖いですね、オドロオドロしい。そして結末も壮絶。ここまで書き込まれていれば、私も満足です。ぐんぐん読み進めます。そして、借金は金輪際いたしませんと、神に誓いたくなります。お勧めの1冊。
    (お勧め度:85/100)2000/08/12登録

  • 「禿鷹の夜」 逢坂剛、文藝春秋、1524円

     警察暗黒小説と銘打っているが、素直に楽しめばよい。まさに娯楽本である。章ごとの挿し絵が良い。30年くらい前にタイムトリップしたような気分。松本清張か、シャーロックホームズか。禿鷹シリーズとして、次を読みたい、そういった気分にさせる本。肩が凝らないストーリ展開にはテンポを感じる。この後の禿鷹の動向に注目したい。
    (お勧め度:85/100)2000/07/30登録

  • 「ハート・オブ・スティール」 芦原すなお、小学館、1500円

     傑作「青春デンデケデケデケ」の作者である。その後、何冊か書いているようであるが、どうも食指が・・・。この本もあまり積極的でなかったのだが、何となく購入してしまった。それは帯に「ネオ・ハードボイルド」とあって、ネオの部分はどうなのか、という興味が沸いたからである。しかしながら期待はずれであった。十分古くさく、かつ、一つ一つにひねりが無く、その解決方法についてもまったく新鮮でなかった。30年前ならまだしも、今の世の中、よっぽど事実の方が不可解奇異である。
    (お勧め度:55/100)2000/07/30登録

  • 「光さす故郷へ」 朝比奈あすか、マガジンハウス、1600円

     これには泣けた。戦後、満州から日本への引き揚げ、「もう一度故郷をみたい」と今では考えられない苦労とつらい経験を重ねた一人の女性を描いている。ノンフィクション故に、生というものを強く感じた。
     実は、この故郷(ふるさと)とは、私もよく知っている町である。普段何気なく見ている風景も、極限の状態に置かれると、この書名のように「光さす」ものに感じるのであろう。
     知られていないが、多くの人たちがこういった苦労をしているのだろう。そんな中の一つを紹介した本ではあるが、戦後の戦争を知らない世代の私たちにとっては、実に貴重な、そして有益な1冊である。なるべくたくさんの若い人たちに読んでもらいたい本である。

    ※ 追伸

     東京在住の主婦よりこの本の感想が送られてきました。私の評より的確に書かれているので、ご本人の承諾を得て、引用します。

    -- 以下、引用 ------------------------------------

     すごいよこれ、感動なんてもんじゃない。胸にズバーンッ、思いっきりストライク。
     これでおしまいかもしれない・・と思ったときあと一歩を歩ませる力、もう少しだけ生きてみようと思う勇気、家族、愛する人、故郷。自分の周りに当然のようにあったことが命がかかった瞬間から、ものすごく大きな存在に変わる。このお話が実話だということで、それを痛感しました。

     醜くても汚くてもいい、とにかく生きること。
     生きていてこそ幸せにまた会えるということ、これまで、単なる言葉として何度も耳にし、自分でも言ってきたことが真実としてわかりました。たくさんの人に読んでもらいたい本ですね。
     「戦友」がこんなにも泣ける歌だということを、今回初めて知りました。聞きかじりでおぼえたこの歌を(一番のみ)子供の頃に法事の席や親戚の宴会で得意になって歌っていたことが恥ずかしい。今思うと、戦争に行った人もいれば、親兄弟を亡くした人もいました。平和な時代を当然のように生きる少女が歌う「戦友」をその人たちは、どんな気持ちで聞いていたのでしょう。

     あの時代に生きて、体験をしてきた人々のことを私たち戦争を知らない世代はもっと知らなければなりませんね。こういうことがあったんだってよ・・ではなく、このような本を読むことで主人公と自分が同化し、逃げ延びる生き延びる・・故郷の土を踏む。その意味で、この本は貴重なものではないでしょうか。

     夏休みの読書として、上の二人に薦めます。涙だばだば、鼻水ずるずるの母を見て、興味は持っているようです。(笑)。もう一冊注文しました。一冊は蔵書として、もう一冊は貸し出し用。
     みんなに読ませるぞー!

    -- ここまで、引用 ------------------------------------

    (お勧め度:98/100)2000/07/30登録

  • 「捨てる!技術」 辰巳渚、宝島社、680円

     先月引っ越しをしたのだが、かなりの量の物を捨てた。知らぬ間に無駄な物は増殖する。この本は、この捨てることに対する認識を改めましょうと主張している。片付けは捨てることから始まる、というのは常識で、私も常々心がけている。それだけのことであるが、この本を読むとあらためて納得するのである。ただし、この本を読んだだけでは片付かない、実行あるのみである。
    (お勧め度:70/100)2000/07/15登録

  • 「巨泉」 大橋巨泉、講談社、1500円

     売れているそうですね、この本。副題として「人生の選択」とありますが、この本の内容は、まさに理想で憧れの世界です。こういった考えを持たなければだめだろうと以前から思っていましたが、この人がこういったことを実践しているとは想像も出来ませんでした。この作者は、テレビで見てた大橋巨泉のキャラからは想像できない、まったく別人ではないかと思うくらいです。先日偶然、「さんまのまんま」に出演していた大橋巨泉を見ましたが、なんか灰汁が抜けたように感じました。やっぱり人間、ゆとりがたいせつだなあと・・・、俺も歳をとったなあ(笑)。
    (お勧め度:90/100)2000/07/15登録

  • 「赤瀬川原平の今月のタイトルマッチ」 赤瀬川原平、ギャップ出版、1600円

     なんとも言えませんが、まさにこの書名どおりで、読まずに内容が想像できる本。でもさすがで、読み始めれば一気に読了。帯には「本邦初!読まずに書く書評」とありますが、ときどきこういう書評を見かけるような(笑)。
    (お勧め度:70/100)2000/07/15登録

  • 「モバイル日記」 玉村豊男、世界文化社、1300円

     私は、モバイルという用語が嫌いだ。ノートパソコンを見て、「モバイルですか」なんて言われたときは、吐き気が・・・。
     それはそれとして、こういったどうでもいい本は、読んでいて気が楽である。そういう意味では楽しめる。それでもこの本は、いわゆるパソコン素人が書いたほんの割にはよく出来ていると思う。昔、矢野徹の『ウイザードリィ日記』なんて傑作がありましたが、とてもそれには及びませんが、まあ、こういう経過をたどるの だろうなと納得できる内容でした。
     お勧めしませんが、暇つぶしなら。
     ちなみに、この作者、どこかで見たことがあったなあと記憶をたどると、書棚にありました。内容は覚えていませんが、『パリ旅の雑学ノート』、『文明人の生活作法』の2冊。後者をぱらぱらと眺めるとなかなかおもしろい。「急いで結婚する者はゆっくり後悔する」「結婚する日はよき時代の翌日である」「結婚の歓びはその苦悩の中にある」・・・などたくさん紹介してあって、ふむふむと読み始めてしまうところでした。こちらならお勧めします(笑)。
    (お勧め度:60/100)2000/07/15登録

  • 「葬列」 小川勝己、角川書店、1500円

     横溝正史賞受賞作、選考委員激賞とのことですが、確かにおもしろかったです。とくに、後半のドンパチ部分などは、現実的かどうかはともかくとして、一気に引き込まれました。ただ、そこに行き着くまでが、なんとも貧弱というか、諄いというか、こじつけというか、選考委員は『OUT』の名前を出していましたが、確かにその通りかなと感じました。
     この作品も、続編を意識していますか。最後もなんとなく欲求不満。この1作で完結する気構えが欲しい気がします。
     でも将来に期待して、末広がりの88点。
    (お勧め度:88/100)2000/07/15登録

  • 「ダブルフェイス」 久間十義、幻冬舎、1800円

     前作『刑事たちの夏』は傑作と記憶していたのでかなり期待して望んだのであるが、少しガッカリ。なんというか、厚みが無いのである。これは、初めて(?)の新聞小説という制約の中で、細切れになってしまったからなのか。また、前作全編にわたって感じた陰湿さがなくなっていて、なんというか重厚感がなく、軽さが目立った。
     内容的には、実際にあった東電OL事件を素材としただけあって、そういう意味では身近な感じがした。闇の部分についての書き込みが足りなく、欲求不満気味。次作に期待する。
    (お勧め度:78/100)2000/05/29登録

  • 「嘘をもうひとつだけ」 東野圭吾、講談社、1600円

     『秘密』『白夜行』・・・東野圭吾はミステリーをさらに深く掘り下げた!と帯に書かれていたので、長編と思ったら、連話の短編だった。この作者は長編ですよね、持ち味は。5本の物語が入っているが、3つ目くらいからパターン化による飽きがでてきた。書き方が上手いので読んでみれば楽しく読めるのだが、うーむと唸らせるまでは届かず、残念である。ちなみに私の好みでは、最後の「友の助言」ですか。
    (お勧め度:65/100)2000/05/21登録

  • 「虜」 藤田宜永、新潮社、1600円

     この人の本は何冊目か覚えがないが、今まで読んだモノの印象がどうも薄い。もう絶対に読まないぞ、という感想は持たないために、こうして再び手に取るのであるが、やっぱり今回も同様の読後感で、一気に読める期待感はあるのだが、うーん面白かったという満足感は得られない。この本に限れば、その理由は、先が予想できてしまうことであろう。ただし、アイデアは良いモノであるから楽しめる。覗き見る快楽。
    (お勧め度:60/100)2000/05/21登録

  • 「ミッドナイトイーグル」 高嶋哲夫、文藝春秋、1714円

     内容は派手で、ここまで来ると漫画的でリアル感はあまりない。が決してつまらない訳ではなく、娯楽本としては十分楽しめる。
     リアル感を欠いている部分としては、ここに出てくるアメリカ軍が弱すぎる点、これだけのことをして国民にわからないはずは無いという点、あまりにも登場人物である写真家がスーパーマン的すぎる、伏線が幼稚などである。
     が、この作者は今後もこの路線でいってもらいたい。あとわずかな努力をしてもらって緻密に、リアルにしてもらえればなお一層ありがたい。
    (お勧め度:68/100)2000/05/13登録

  • 「ミドリの猿」 松岡圭祐、小学館、1600円

     この本、前評判が悪い。「千里眼」の続編であるが、どう考えても駄作であったと思う「」よりは全然面白かった。悪い悪いという先入観を持って読んだからだろう。「千里眼」以上を期待して読んだらこんな風には感じなかったと思う。
     確かに3部作の中だるみ的なところはあって、この本では何も解決はしていなくて謎だけ残して終わっているところなどまったくずるいと思うし(消化不良)、ストーリの展開も手を広げすぎて現実感が全くなくなっているところがマイナス。
     一つ、この岬美由紀の気に入らないところは、バイクにヘルメット無しで乗っていること。何にも颯爽としているとは思えないし、社会通念上許されることではない。不愉快な部分。いくら子供を助けようとしても、このノーヘルの部分で感情移入しかけた私の脳味噌は興ざめ。臨床心理士ならその辺を考えて貰いたい(笑)。
    (お勧め度:80/100)2000/05/08登録

  • 「オウム解体」 宮崎学、雷韻出版、1600円

     上祐史浩との対談。帯に書かれているように大激論にはなっていない。つまらない。結局、重要な部分になるとはぐらかされたりして、核心に迫ることが無く、盛り上がりにも欠ける。宮崎学がやくざの世界と対比するのが笑える。
     この対談から伺えるのは、オウムって実は将来の事を何にも考えていなかった、ということか。だから突っ込んだ質問をしても返答が出来ないのだろう。
     次の対談では、決定的な証拠を突きつけてガンガンと責め立てて貰いたい。
     表紙の写真の髭がなんか棘っぽい。
    (お勧め度:60/100)2000/05/07登録

  • 「ストロボ」 真保裕一、新潮社、1400円

     今までとは違った雰囲気の小説で、いわゆる新境地ということか。だからといって面白いと言うことはなく、やっぱりその作家のイメージというか、期待というものがあって、そこからはずれるとガッカリするというマイナス面で損をしてしまう。
     作者は、カメラが好きなんでしょうね、あるいは写真でしょうか。一度こういう写真を題材とした小説を書いてみたかったというところでしょうか。
    (お勧め度:60/100)2000/04/28登録

  • 「妻と私」 江藤淳、文藝春秋、1000円

     この本を出した後、すぐに自殺をした江藤淳。

    > 心身の不自由が進み、病苦が堪え難し。去る六月十日、
    > 脳梗塞の発作に遭いし以来の江藤淳は、形骸に過ぎず、
    > 自ら処決して形骸を断ずる所以なり。
    > 乞う、諸君よ、これを諒とせられよ。
    > 平成十一年七月二十一日 江藤淳

     遺書全文であるが、本当の遺書はこの本だったのではないか。これほど生と死を感じる本はない。胸に突き刺さるような感動的な作品であった。もう一度、家族というものを考え直さなければならない。そして、生の実感を。
    (お勧め度:100/100)2000/04/20登録