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Since 1997/06/07
書籍寸評
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書籍寸評(2) かなり中期
小学校の頃から読書感想文は苦手だった。感想を書いている暇があったら本を読んでいたいのだ。けれども自分が読んで面白かった本・つまらなかった本を皆に紹介したい気もあったは事実。しかし、それをするとお節介になる事も知っていた。だから本当に本を読みたい人にしかそれについて話をしなかった。
今、これを読んでいる人は、自ら選んで読んでくれていると思う。だから遠慮なく自分本位の感想を書こうと思っている。
- 「神々の山嶺」
夢枕獏著
下巻の帯には「もう山の話は二度と書けないだろう。それだけのものを書いてしまったのである。どうだ、まいったか」と著者の言葉を入れてしまうほどの自信作。
確かに、新田次郎の新作を読めなくなった今となっては、山岳小説はめぼしいものが無く、ある意味では強烈なインパクトがある小説であった。どちらかといえば、クライマーの手記を読んでいる感じである。けれども、さすが夢枕獏である。ミステリーまではいかないけれども謎を掛け、しかも最後まで緊張感が保った内容である。面白い。
登攀シーンのリアルさはすばらしい。しかもそれが実際に体験することが出来ないエベレスト頂上直下であるだけに、この見てきたような書き込みは貴重だ。すばらしい。
こういった娯楽小説がどんどん書いてもらいたい。少しくらい想像が入ろうが史実と違おうがいいのだ。面白ければ、それで納得してしまう。教科書ではないのだから。
山岳小説は本当に面白い。
(お勧め度:100/100)満点だー。
- 「同伴賭博」
安部譲二著
私は賭け事が嫌いではない。少なくとも興味はある(笑)。だからギャンブル小説は大好きだ。阿佐田哲也は、ほとんど読んだ。「はっぽうやぶれ」も持っている。
そこでこの本だが、つまらん。作者は、塀の中にもいたとの触れ込みで売り出したが、内容はともかく小説として読む気をなくす。安直な漫画のようで、小説になっていない。だめ。読むことが苦痛だった。
(お勧め度:42/100)
- 「Cの福音」
楡周平著
楡周平の処女作である。
この作者は外資系の日本法人に勤めているらしいのだが、おそらく輸入関係・船会社みたいなのかな。汐の香りがする。
20万部も売れたそうだ。確かにあっという間に読み終えてしまう面白さもあるが、じゃあ、2作目も面白いだろうなと思うかどうかは別。もっと書き込まなければと思う。
まあ、結果は出ていて、2作目の「クーデター」は、この「Cの福音」より面白く少し新しい分野について書き込んでいるので、やっぱりたいしたモノだなと感心したわけだけれど。次の作品に繋がる終わり方をしているので、おそらくシリーズものになるのだろう。新たなピカレスクロマンが生まれた。次が楽しみ。
タイトルのCとはコカインのこと。コカインの売買の方法については、実際にやっている人がいるだろうなと思う。いわゆる、ありがち。したがってそれほど読み終わっても斬新という感じはない。
(お勧め度:70/100)
- 「アンダーグラウンド」
村上春樹著
オウム真理教による地下鉄サリン事件の被害者に対するインタビューを集めたもの。数千人という数の被害者を出したこの事件は、いわゆる表に出てこない「他何名」という感じの被害者がほとんどで、しかしながら、それらの犠牲者は未だに後遺症やら、あるいは事件による身辺の変化など重大な被害を被っている。
そのような被害者にスポットを当てたこの本は、意外にこの事件の重要な真実を語っているのかもしれない。この被害者の声は、例えば坂本弁護士が今喋ることが出来れば、その声と通じるであろう。この人たちの声を忘れてはいけないと思う。
(お勧め度:90/100)
- 「人間臨終図巻(上巻)」
山田風太郎著
以前「本の雑誌」かなんかで紹介されていて気になっていた本だけど、偶然見つけて購入した。
布張りの装丁・品のある箱付で2500円はお得。
古今東西の英雄・武将や犯罪者など有名人の死に様ばかり集めた本。しかも年齢(死亡)の若い順に書かれているので面白い。この上巻は、15歳から64歳まで死んだ人を集めている。
自分はウン才になるけど、この年齢に達する前に坂本竜馬も沖田総司も吉田松陰も沢村栄治も源義経も死んでいるのだ。
ああ、それに比べて俺は未だ何もしていない、などと自分に嫌気が差してくる悔しい本なのだ。
(お勧め度:100/100)
- 「インターネット探検」
立花隆著
今更、インターネットの有効性を紹介する本など飽き飽きという感じだが、この本は1996年4月の発行で、実際に原稿を書いたのはもっと前のことであるので、ご了承願いたい。けれども流石は立花隆であって、
興味本位・覗き見感覚のインターネットではなくて情報を必要とし得ようとする利用しようとするインターネットを書いている。
この本を読んでみると、現在の誰でもどこでもインターネット感覚は、やっぱり本来の姿を逸しているような気がする。
(お勧め度:70/100)
- 「宮崎勤精神鑑定書」
瀧野隆浩著
事件は悲惨で犠牲者や家族のことを思うと本当に忌まわしい内容で、このような本も読んでいてどうしようもなく辛くなる時がある。
この本の著者は、毎日新聞社会部記者で以前から宮崎勤の多重人格説を報道している人である。しかしながら、所詮精神医学については素人で、特に医学として多重人格が確立されていない現在、この本を読んでも論点がはっきりせず、結局、結論が出されていなくて読了後もすっきりしない。わからないがとにかく異常な事件であると言うことと、多重人格説に潜む現代の異常な社会背景などに対して疑問を投げかけているということはわかる。
(お薦め度:60/100)
- 「ラブ&ポップ」
村上龍著
村上龍の小説で私がここ数年読んだものでは、私にとって面白いものはなかった。この本の副題の元となった『トパーズ』もしかり。『69』みたいな小説書かないかなと思っていたりしたのだけれど、この小説は面白い。
田舎は知らないけれど、都会の女子高校生ってこんな風なんだろうなと思う。物が溢れて情報が氾濫し誰もが目的なく彷徨する世の中は、この小説が書き込む感性と一致するのだろう。
ちなみに帯のコメントを小室哲哉が書いているのが笑える。ついでにこの本は、話題の幻冬社の発行である。
(お薦め度:87/100)
- 「山岳警備隊出動せよ」
富山県警山岳警備隊
『岳人』創刊50周年記念として出版された富山県警察山岳警備隊の手記集である。実際に現場で活動をしている山岳警備隊の記録であるので生々しいが、所詮、文章に関しては素人であり、中には必要以上に気負ったものがあり、読み物としては面白いがあまり印象には残らない。実際には、この本を読んだ以上に緊迫し壮絶なものであろうが、なかなか文章にあらわせないのが残念。
ちなみに富山県警の山岳警備隊は、登山者に「もし稜線で落ちそうになったら、富山県側に落ちろ。どんなに危険な現場でも、誰ひとり近づけないようなところでも、彼らならきっと助けに来てくれるから」と言われるほどの精鋭である。
(お勧め度:70/100)
- 「新解さんの謎」
赤瀬川原平著
その昔、「本の雑誌」に新明解国語辞典第4版のことが載った時、辞書好きの私がさっそく買ってみたのは言うまでもない。その時には「動物園」「恋愛」などが紹介されていて、やっぱり感動したのを覚えている。
そう、この本の新解さんとは、新明解国語辞典(しかも第4版でなくてはならない)の編者ことだ。
赤瀬川原平も舐めるようにこの辞書を読んだんだろうな。新明解が面白いのはわかっているがそれに対する著者のコメントや突っ込みが、今回も才能もひしひしと感じる。書店で立ち読みをしていると、ついつい読み終わってしまうほど、ずるずると読みつづけさせられる面白さだ。
(お薦め度:90/100)
- 「突破者」
宮崎学著
こんな面白い自伝はない。
しかも現在もマスコミに実名で現れるグリコ・森永事件の第1級容疑者であったキツネ目の男。その半生は、こんな男がいまだに本当にいるんだと疑いたくなるくらいの突破者。まさに悪漢。小説のようである。
特に学生運動のころの話は、実に詳細に書かれていて、よくある警察からみた東大紛争なんかよりもぜんぜんリアルで具体的。文章も記者をしていただけあって、巧みで理論的で濃密で過激。
嘘かほんとか事実は分からないが、こうなると多少の誤りがあっても面白ければいいんだと言いたくなるほど、読み物的半生に拍手を送りたい。
(お薦め度:80/100)
- 「海峡の光」
辻仁成著
第116回芥川賞受賞作品。純文学としては解かりやすく読みやすい。けれども陰湿で暗い。北海道・海・刑務所・いじめなど条件は揃い過ぎという感じで内容と合致している。読了後、後味が良くないのはどこか自分にも同じようなところがあるのかとギクッとする。
それにしても、難しい言葉を使っていてなんども辞書を引いてしまった。難しければいいというものではないが、自分の学の無さも手伝って、必要以上に厳かに純文学をしてしまった(笑)。
(お薦め度:80/100)
- 「本の運命」
井上ひさし著
私は井上ひさしを尊敬する。
そして、私がイメージする井上ひさしの原点を書き出したような内容がこの「本の運命」である。当然、おそらくキリスト教とが聖書を読むように、私も丁寧にじっくりと読んだ。
井上ひさしの本に対する考え方や愛情が毀れそうなくらいぎっしりとこの小さな本に詰まっている。それは月に4〜5百万円も書籍を購入していた時期もあったような人、ならである。
(お薦め度:100/100)
- 「クーデター」
楡周平著
この楡周平の第2弾長編小説。書名から察すると三島由紀夫の事件みたい思われたけど、内容は全く違う。読んでいけばすぐここ数年の事件・世相を載せた新聞記事などを思い出すようなことばかり。けれども雰囲気がわかるだけに面白い。一気に読み終わってしまう。
ただし、小説と見ると、もう少し書き込んでもらいたいし、かつ、コラムの集合体みたいな構成も何とかしてもらいたい。
ついでに無責任な意見ながら、どうせノンフィクションなのだから、もう2000枚も書き込んで(笑)、日本中に事を起こして解決してもらいたいなあというのが正直な気持ち。
(お薦め度:90/100)
- 「まあじゃんほうろうき(1)〜(4)」
西原理恵子著
まさにギャンブラー。
堅気の賭け事としては、まあ一流の勝負師だな、この娘。巻がすすむにつれて洒落にならなくなり、ハイになる。読者がおいおい大丈夫かと心配になるほど。その辺が一番面白い。すごいですよ。
最初、1巻の頃は、本当にど素人で麻雀覚えたて。役もわからん、点数もわからん。けれども面子はそうそうたるメンバーでものすごい。麻雀を知らない麻雀作家誕生と言われたのも無理はない。体を張ったシャレは本当に面白い。麻雀やらない人も読んでみるべし。
(お薦め度:95/100)
- 「長谷川恒男 虚空の登攀者」
佐瀬稔著
長谷川恒男は団体の中で自分を表現することが苦手なタイプ。そして、アルピニズムの美意識に厳しい人。自分を表現する事に対しては死をも恐れない人。だから単独行である。それをうまく表現している言葉が、この本のタイトルである虚空の登攀者であると思う。私が一番好きな登山家だ。
この本の表紙の写真はすばらしい。アイガー北壁の垂直の壁を一人で登っている写真なのだが、これがすごい。アイガー北壁を実際にこの目で見た事があるが、その様子とこの写真をどうにも重ねる事が出来ないほど非現実的な写真である。
(お薦め度:95/100)
- 「奪取」
真保裕一著
犯罪小説。その犯罪とは偽札づくり。究極のコンゲーム。著者はかなり印刷技術に関する勉強をしたようで、延々と印刷に関する再新技術を使った偽札づくりのシーンが続く。本当か嘘かは判らないが、似たような事をすれば実際に出来るのだろうなと感じる風の内容。
読んでみて、これだけの事を実際に誰にも気付かれず行うことは無理だろうなと感じる。金も掛かるし、すべてを犠牲にしないとできないだろう。この本は、さすが小説で都合よくうまくつじつまを合わせている。エンディングはちょっと残念。
2段組み520ページの読みでのある単行本だが、意外にすんなり読めるので暇があったら読んでみてもよいかも。
(お薦め度:75/100)
- 「ぼくはこんな本を読んできた」
立花隆著
他人の読んでいる本は気になる。人の書棚・電車の隣に座っている人が読んでいる本・作家の愛読本などなど気になってしかたがない。そんな人はぜひ読んでみると良い。
あの立花隆はどんな本を読んできているのか、興味が尽きない。ネコビル顛末記・書斎論もあり、そして驚きの立花隆、中学3年の時の「僕の読書を顧みる」と題された作文まである。中学3年で読書を顧みるんだから凄い!しかも読んでいる本ときたら所謂名作と言われる本は読み尽くしているといと言いたくなるくらい。やっぱり立花隆はすごいのだ。ほんとうに凄いのだ。
(お薦め度:98/100)
- 「テロリストのパラソル」
藤原伊織著
第41回江戸川乱歩賞受賞作。毎回、乱歩賞受賞作は読むように心掛けている。ハードボイルドのパターンとして酒飲み・一見粗雑そうだけど緻密でやさしいところがある人物が主人公。まったくこの小説もそのとおりのハードボイルドであり、過去の出来事が段々と明かされていくテンポがよく読みやすい。東京大学出身のこの作者の年代は、大学闘争を実体験している。したがってその辺を素材としたこの小説は実にリアルに描かれている。読み応えのある作品。
(お薦め度:85/100)
- 「日本語大博物館」
紀田順一郎著
すべて当てはまらないと思うが、本好きは活字好きである場合が多いと思う。私もいわゆる活字中毒。
今の世の中は写植の時代で活字中毒と言っても実際に読んでいる本はほとんど写植である。
この本は、活字の歴史と魅力を豪華に紹介した本。実に興味深いものばかりで、1ページ1ページ丁寧に読みたくなる。装丁も値段も豪華、4800円。ずっしりした重みも活字中毒には堪らない。
副題「悪魔の文字と闘った人々」・・・すばらしい1冊。
(お薦め度:100/100)おー、満点。
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