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書籍寸評

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書籍寸評(20) 2004年5月以降

  • 「震災列島」 石黒耀、講談社、1800円

     遅筆堂は、東海地震の震源域に住んでいる。だから、地震とか原発関係には興味がある。
     この小説は、これらを題材にしたものであるが、どうにもストーリの設定が小さい。大規模地震を題材とするのであれば、もう少し大上段に構えた内容にしても良いのでは。主人公の復讐にかかる部分の記載が多すぎて、中ダレ、締まりが無くなっている。
     地震発生部分は迫力があるが、これにつてはもう少し遠慮して書くべきでは。というのは、実際にその地域に住む私が読んだとき、かなり不愉快に感じるのだ。小説だから、という理由もあるが、それにしても、その地域で実際に生活している人たちを弄びすぎている。
     また、全体的に政治、行政批判が多いが、「あんたが正義ではない」と反論したくなる部分もある。これも不愉快というか、目障りな部分であり、本筋と離れた部分で全体をつまらなくしている。
     阪神淡路地震、中越地震などを見ると、その60倍以上といわれる東海地震の恐ろしさはわかっていても、このような小説で書かれると、かなり不安になる。しかし、この本全体がそういう雰囲気であるのだが、漫画チックな表現、軽いノリみたいなところを見ると、本当にそうなのかという疑問も感じる。
     いずれにしろ、作者の筆力は、はてなマークであるが、わっーと読み終えるパワーはある。お勧めできないが、読んでみてもいいかもしれない(なんじゃそれ)
     (お勧め度:70/100)2004/11/09登録

  • 「指揮官たちの特攻」 城山三郎、新潮社文庫、438円

     その昔、『男子の本懐』を読んだ以降、ファンになった城山三郎であるが、残念ながらこの本に関しては、つらいものがあった。第二次大戦を描いた書籍についてはそれなりの数を読んでいるつもりであるし、興味を持っている。しかしながら、全体の構成の問題であろうが、どうにもわかりにくい。著者の積年の思いが詰まっているということであるが、その思いが選考しすぎたのではないか。
     この本はドキュメントであるが、NHK特集あたりで見れば感動するのであろう。大変失礼な話であるが、巻末の澤地久枝の解説がとても良い。作者の思いは、この解説に凝縮されているようだ。
     戦後50年以上経つのでかなり風化してきている過去の事実、この本は、そういったものの忘れてはならい記録として大変価値のあるものであろうということは理解する。
     (お勧め度:60/100)2004/11/09登録

  • 「心が雨漏りする日には」 中島らも、青春出版社、1300円

     中島らもが体験した躁鬱人生、実にあっさりと書いているが、そこに至るまでは大変な苦労があるのだろう。中島らもらしいところは、躁鬱病に対する造詣の深さと悟りを開いたような病気に対する態度、これは大きな山を越えた人であるとの証明であろう。だから、ものすごい状況を書いているのだけれど、そう感じさせないのだ。
     「うつ病は確かに自殺に至る病であるけれど、予備知識があればそれは避けられる。癌に比べればちっちゃな病気だ。君もかすんだ目で星を見ろ。そして叫べ。くたばれ、うつ病」と立ち向かう。
     そんな中島らもが、あのような死に方をしたのは本当に残念。
     (お勧め度:88/100)2004/11/08登録

  • 「ゴールドラッシュ」 柳美里、新潮文庫、552円

     感動長編とのふれこみ、どこがという感じである。読む前からこの作者には、なんだか抵抗があり、ある意味うさんくさく思っていたのであるが、残念ながら小説(読み物)として理解できない部分があるし、当然感動もない。読んでいて苦痛であり、また、読後感も最悪で二度とこの作家のものは読みたくない。
     (お勧め度:40/100)2004/11/07登録

  • 「電車男」 中野独人、新潮社、1300円

     10月20日に発売後、20万部以上も売れた本。2chを舞台に繰り広げられたリアル・ラブ・ストーリということである。もてないヲタク男が電車の中で助けた女性にインターネットサイトに助言を求めながら告白をするまでを編集したもの。正直言えば、無茶苦茶おもしろかった。先が気になり夜中の3時に起きて読んでしまった。この類の読み物の必要な要素がすべて網羅されていて完璧といわざるを得ない。これは物語としては、ということである。
     しかしながら、これが実話であるかは別の話。実際に2ch上で大騒ぎした事実はあるのであるけど、電車男の存在自体、事実はわからない。しかし、この話が実話でなくても別に俺は困らない。いろいろ矛盾点があるにしろ、もし実話ではなくて巧妙に仕組まれたものであれば、それはそれで凄いことであると思う。インターネット社会を見事に利用した虚構の世界を創造しているからだ。
     もう一つが、著作権の問題。2chのような掲示板の書き込みは誰のもの?10年以上前のことになるが、まだパソコン通信時代に、朝日新聞連載小説の筒井康隆『朝のガスパール』と連動した掲示板「電脳筒井線」が出版されているが、これは筒井康隆編著となっている。インターネット上に電車男関連サイトがたくさんあるが、そこでもこのような議論が多くされている。まあ、これも自分が参加しているものではないので関係ないと言えば関係ないのであるが、最初から出版を目的として仕組まれたことであった場合、そこに参加していた人たちの感情は無視できないであろう。
     いずれにしろ、この本だけを読んで楽しめることは間違いないわけで、そういう意味ではお勧め。
     (お勧め度:100/100)2004/11/07登録

  • 「出たとこ勝負のバイク日本一周(準備編)」 小林ゆき、笊カ庫、650円

     竄ヘ「えい」と読み、竢o版社というところが発行している。パソコンでこの字を出すのに苦労をした。いったいなんなんだという出版社名だね。
     著者は、モーターサイクルジャーナリストということであるが、その世界から随分と遠ざかっているので知らなかった。バイクで日本一周をすることになったきっかけ、それまでの生活など、「モーターサイクルジャーナリスト小林ゆき」ができるまで的な内容。青春まっただ中で、何となく自分のことのように懐かしく感じる。著者は、なかなか多彩な才能があるようで、銀座のクラブでピアノなども弾いたりしている。
     自分もいつかはバイク日本一周などと思っていたが、いざやるとなるとおいそれ実行できるものではない。ここには、若さと度胸が必要である。著者も女性ながらすごい実行力があり、その準備にかける努力に敬意を表する。そして、バイクへの愛着に共感を覚える。この本を読んでいると、ああ、若い頃はよかったなあと遠い昔を思い出す。
     (お勧め度:80/100)2004/10/24登録

  • 「世界の中心で、愛をさけぶ」 片山恭一、小学館、1400円

     「冬ソナ」と「せかちゅう」、これだけは手を出してはいけないと心に誓っていたのだが、二つとも罠にはまってしまった。やっぱり読んではいけなかったのだ、だってつまらないんだもの。読み進むうちに、その先のシーンや会話、展開がなんとなく想像できてしまうのだ。そういった意味では期待を裏切らないのだけれど、そのまま最後まで読み終わり、消化不良の状態。
     奇抜がいいばかりではないが、やはり展開の意外性は必要だ。また、同じ内容でも全体の展開によっては驚きを覚えることもあるだろう。この本でいえば、最初からアキとの別れは想像できてしまう。
     比較としてどうかと思うが、内田春菊著『南くんの恋人』はものすごい衝撃を受けた記憶がある。バカ売れしたの「せかちゅう」と、どうしても比べてしまう。
     (お勧め度:60/100)2004/10/17登録

  • 「私生活」 高橋源一郎、集英社、1785円

     作家の生活であるけれども、その生活は自分たちの周りでごく普通に見る事ができるものとそう変わるものではない。しかし、感性と視点が違うのだろう。物事の見方、捉え方が私たち凡人とは違うのであり、それを文字で表現するのが仕事なのだ。だから作家の私生活、それは作家そのものを写し出しているように感じる。
     この本は、日記でもなく、生活そのものを日々記載しているものではないのであるが、日々考えている事、感じている事が突っ込んで書かれていてとても興味深い。
     (お勧め度:85/100)2004/08/27登録

  • 「「冬のソナタ」をもっと楽しむ本」 市吉則浩編、二見書房、1200円

     帯を見ていると読むのがイヤになってしまうマイナスのオーラを感じるが、読んでみると結構面白い。韓国の文化がとてもよくわかる。韓国は2度行った事があるが、この本を読んだ後なら、市井や街中での人物ウォッチングも楽しいかもしれない。
     いずれにしろ、よくわかるのが、この「冬のソナタ」というドラマが、当たり前であるが韓国で作られ、韓国の文化や風俗を描いているということだ。いくら「キャンディキャンディ」が参考にされているとはいえ、日本ではこうは作られないであろう。しつこいが韓国のドラマである。
     だから、どっぷりその魅力に浸かるのであれば、この本に書かれているような事を理解して、日本語吹き替えではなく韓国語オリジナルバージョンで見るべきであろう。
     (お勧め度:70/100)2004/08/17登録

  • 「立花隆秘書日記」 佐々木千賀子、ポプラ社、1500円

     あの立花隆の秘書ってどんな人だろうと、随分興味を持って読み始めたのだが、いやいや、普通っぽく書いているけどそれなりの方である。立花隆という知の巨人を相手にするのだから常識では考えられないような環境であって、当たり前ではこなせない事は十分に想像できる。あれやこれやの苦労をするのだけれど、それを楽しみ、自分を刺激していく。著者が秘書を務めた4年間でどんどん成長していく様子が手に取るように感じられる
     圧巻は、最後の部分、つまり秘書の解雇を言い渡された後の、立花隆に対する苦言。なかなか言えないだろうと思うのだけれど、はっきりと文章にしてしまうほど、確たる信念を持って意見する。これは凄い、やっぱり著者は500人の中から選ばれただけの事があったのだろう。
     全体的に、文章は明快で、かつ、書名から逸れない程度の逸脱が、読んでいて飽きさせない。
     (お勧め度:90/100)2004/08/09登録

  • 「冬のソナタ特別編」 「冬のソナタ」特別編集委員会、晩聲社、1500円

     この本を編集したという「冬のソナタ特別編集委員会」なんてものは、得体の知れないファンの単なる集合体であって、公式でも正式でもない烏合の衆である。というか、この本の帯にあるように「冬のソナタは続きがあった」という内容を書く権限はなにもなく、勝手に思い入れだけで作られたものである。まやかしである。
     よく本当の作者が怒らないなあと思う。いずれにしろ、この本は真剣に読んではならないのである。内容については特に語るものはない。ただし、一つ文句を付けろと言えば、あまりにもへたくそな表紙の絵、これはひどすぎる。私の家族も凄く怒っていた、許せないと。こういう絵を人前に出してはいけないのである。特別編集委員会の委員とやら、ほんとうにいいんかい、これで(怒)。私は、決して、ペやチェのファンでもないのだが、それにしてもこのイラスト(と言いたくないが)はダメだ。ダメだ、ダメだ、ダメだ。ダメなのである。
     (お勧め度:40/100)2004/08/03登録

  • 「ヘーメラーの千里眼」 松岡圭祐、小学館、1995円

     やっぱり千里眼、岬美由紀だ。特に今回は、防衛大学校時代の青春を描いており読み応えがある。後半の戦闘シーンもじっくり書き込んでおり、迫力ある。おもいっきり右寄り思想であるが、不愉快ではない。
     ストーリ自体は複雑ではなく、わかりやすい。ほぼ予想したとおり進展し、どちらかと言えば、岬美由紀の青春を描くためのおかず的な役割である。単純で明快であるが、細部まで書き込んでいるため、安直な感じがせず、どんどんと安心して読み進むことができる。初期の作品の勢いが復活したようだ。おすすめ。
     (お勧め度:90/100)2004/07/25登録

  • 「四日間の奇蹟」 浅倉卓弥、宝島社文庫、690円

     帯に「魂の救いのファンタジー」とあったので、ちょっと抵抗があったのだが、意外に面白かった。第1回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作である。内容的にはどこかで読んだような気がするもので、あまり新鮮味がないのであるが、なんというか、組み立てがうまく巧妙な伏線が設定され、また媚びない文章は、先がわかっていても先を読みたくなる魅力があった。これは、まさに著者の筆力であろう。
     ちなみに、この第1回の銀賞は、私が途中で挫けた「逃亡作法」である。何だかなー。
     (お勧め度:50/100)2004/06/20登録

  • 「リアル鬼ごっこ」 山田悠介、幻冬舎文庫、533円

     読んでいて、まず感じたのは文章が下手、安っぽい。単純でわかりやすいけれども、全体的に緊張感がない。はっきり言えば、つまらない。だからなんなんだと言いたい。この感覚が世の中をおかしくなっていく原因ではないかと疑いたくなる。
     (お勧め度:50/100)2004/06/20登録

  • 「「非国民」手帖」 噂の真相、情報センター出版局、1400円

     著者は、「歪」と「鵠」と称するペンネームを持つ人。『噂の真相』のコラムを集めたものであるが、なんというか、いろいろな考え方があるんだなというのが正直な感想。常々、いろいろ思う事はたくさんあるが、それらは概ね受け入れながらも何故かという感覚でいつもいる。真っ向から否定する事に抵抗がある。何が正しくて何が悪なのかわからないからだ。裏と表、右と左、どちらも正しい、でも一方から見れば否という。という意味でざっーと読み飛ばした本である。
     装丁がいい。
     (お勧め度:70/100)2004/06/20登録

  • 「夜回り先生」 水谷修、サンクチュアリ出版、1400円

     著者は、夜間高校の先生で、夜の町で不良少年少女に声を掛け、更正に努力をしている人との事。テレビを見ないのでよく知らないが、マスコミにも出ているようである。本人も苦労をしいろいろな経験をしているようで、そういったところから話に現実感が出てくるのであろう。
     この書籍は、そういった著者は現実、活動をかなりシンプルなイメージで表現していて、装丁や写真、文体など考えている。が、実際の所、自分の期待値としてはもの足りず、もう少し生の声を聞く事が出来るのではと思っていた。
     けれどもこの本を出版した著者の意図がわからない。やや疑問に感じながら読み終わったが、それほど後味が悪いものではない。かすかな期待が持てる内容であった。
     (お勧め度:70/100)2004/06/06登録

  • 「三億を護れ!」 新堂冬樹、徳間書店、1800円

     つまらない。帯の「すべての文学賞に背を向けた超問題本」の文句はなんだ。意味がわからないし、超問題本とあるけど、どこが問題なのか読み終わってもわからない。問題があるとすれば、著者の姿勢か。作家としてのプライドを持ってもらいたい。基本的に、安直である。軽すぎる。ストーリ全体に対して思い入れがなさ過ぎる。
     内容は、しがないサラリーマンが宝くじ三億円が当たってしまい、それに群がる詐欺師云々の誰でも思いつきそうな話である。つまらない。まあ、貧弱な発想のもと書き始めたのはいいとしても、基本的に小説として品がよいというものではなく、かなり漫画に近い文章表現と展開で、読んでいて時間がもったいなくなる。読者は限られた時間の中で読書に時間を費やし、また、少ない小遣いを投資して購入しているのである。著者は反省すべきである。読者が満足できるような小説を書くよう最大限の努力をすべきである。
     (お勧め度:50/100)2004/06/06登録

  • 「負け犬の遠吠え」 酒井順子、講談社、1400円

     あまり読みたくなかったのだが、うっかりamazonで「ショッピングカートに入れる」ボタンをクリックしてしまった、ということにしておこう。真剣に読むべきものではないなと思ってざっーと読んでみたところ、結構面白かった。為にはならないけど、納得できる推察と論理には、バカバカしい中にも光るものがあった。それでも時間がもったいないと思う人は、最後の「・・・の十箇条」だけを読めば充分。
     (お勧め度:75/100)2004/05/25登録

  • 「ハイスクール1968」 四方田犬彦、新潮社、1600円

     著者の名前(ペンネーム)を見ていい加減だと勝手に思っていたのだが、読んでみると凄い。超進学校から東大、高校に入る前の春休みに高校三年までの数学を説いてしまったという人。
     1960年代が魅力的な事は今更言う事ではないが、それはその時代に生まれ、成長の過程でその雰囲気を感じ、世の中の流行に影響され、今の遅筆堂の基礎ができあがった時代である。この1960年代でも、著者が高校一年生になった1968年から3年間の事を綴った自伝。面白すぎる。このものすごい知の集積は、憧れをも感じる。全編を通じて当時の臭いを感じる。それは今にない不安定な世の雰囲気と世界から発信される新しい文化と物質。魅力的であるが危険も感じる期待と挫折の時代であった。この一冊は、当時を知る読者にとって著者と共感を得る事が出来る貴重な存在である。
     (お勧め度:95/100)2004/05/24登録

  • 「オウムと私」 林郁夫、文春文庫、752円

     地下鉄にサリンをまいた林郁夫の告白本である。内容は十分に濃く、読み応えがある。幼年期から自供までを獄中で綴った手記で、オウムに染まり、だんだんと深みにはまっていく状況がよく書かれている。途中、言い訳と正当性の主張がうっすらと感じられる部分は何となく恐ろしく感じられるが、概ね反省の後悔の念が表現されている。優秀な心臓外科医であった著者とオウム真理教。どうしてかという疑問を完全に払拭させるものではないが、それだけに宗教という概念の得体の知れない世界を垣間見る事が出来る。
     この本をある総合病院にかかったときの待ち時間に読んでいたのであるが、なんとなく看護士や医者の前では書名を隠してしまった。同じ人の命を預かる仕事をしている人たちには著者の行動をどう思っているのか。
     ちなみに、この本と関係はないのであるが、著者が逮捕され連行される映像の時に着ている青いジャケット、あれ私も同じ服を持っていて当時はいつも着ていたのですね。YAMAHA製なんですけど、結構高かったんです、私としては。あの映像を見ると、ああオレもあんな風に連行される事があるのかな、なんてヘンな事を思ったりしている馬鹿なおれ。
     (お勧め度:80/100)2004/05/08登録