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Since 1997/06/07
書籍寸評
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書籍寸評(3) 1997年11月以降
最近、また本を読みたいという気持ちになってきた。少し生活に余裕が出来てきたのかな。というよりも精神的にゆとりが持てるのであろう。本を選び購入するワクワク感は、ほんとうに癖になる。
- 「綾」
瀬戸慎一郎、アスペクト
副題として「レースを決めたあの一瞬」とある。そう競馬での勝ち負けを左右したその理由、まさに綾を書き出した本。
なぜ強い馬が負けたのか?なぜ弱い馬が買ったのか?明と暗を分けた知らざる一瞬の物語。その理由は勝負が終わってみなければわからない、そして終わってみればその理由が見えてくる。実力では計り得ない理由、それがまさに「綾」である。
(お勧め度:80/100)1998/05/17登録
- 「触発」
今野敏、中央公論社
爆弾テロを取り扱ったサスペンス。これはズバリ面白い。久しぶりに読むのが惜しくなる小説を読んだ。この小説の爆弾テロは事前に防ぐのではなく、実際に爆発させてしまうシーンが何度か出てくるのが恐ろしい。
謎解きではなく、犯人も判明していてその心理も描かれている。そういった点がイライラを無くしていると思う。やたらと複雑にしてテンポを外し。余分なことに気を持たせる小説が多い中、素直に内容に没頭できた。
傑作である。次作を早く読みたい。
(お勧め度:95/100)1998/05/17登録
- 「仮想報道」
歌田明弘、アスペクト
インターネットによるアンダーグラウンドな情報と意見の可能性を検証した内容。確かに規制に無い無法地帯の情報の方がリアルで面白いであろう。この本は、今は無き初代「週間アスキー」に連載されたもの。
(お勧め度:60/100)1998/05/17登録
- 「我輩は施主である」
赤瀬川原平、読売新聞社
しかし本当に作ってしまった!という著者の戸惑いが随所に感じられる小説。そうでしょうねえ、屋根にニラを植えた自宅なんてと思うのだけれど、本人は色々な理由をつけて無理やり自分を納得させている。
もしあなたが自分の家を建てようとして、その参考にとこの本を手に取るのなら、期待しないほうがいいかもしれない。なぜなら、この家は赤瀬川原平だから存在しうるのだから。
(お勧め度:60/100)1998/05/17登録
- 「科学者」
月本裕、アスペクト
筆者が21人の科学者のインタビューをまとめた内容であるが、筆者が理系の方でないのでややつっこみに物足りない。帯には「理系学生必携の書」とあるが、私のようなド文系が読んだほうがいいかもしれない。
企画的には、普段知り得ない科学者の素顔がのぞけたり、こんなことを研究している人がいるのかということがわかるなど面白いので、今一歩の踏み込みを期待したい。
(お勧め度:70/100)1998/05/17登録
- 「極秘捜査」
麻生幾、文藝春秋
いやというほどのたくさんのオウム関連の書籍があるが、この本は特に自衛隊の対応が詳しく書かれていて読み応えがあった。何度読んでもオウム真理教については、驚かされることが多く、しいては日本の治安にも不安を感じる。人々は喉元過ぎれば・・・の感覚に慣れていて、この恐ろしい団体のことを忘れないように定期的にこのような本を読んだほうがよいかもしれない。
(お勧め度:90/100)1998/05/17登録
- 「平成トム・ソーヤー」
原田宗典、集英社文庫
冒険小説とまでも言わないが冒険物語程度の内容。高校生が主人公であるのでどちらかと言えば青春冒険物語か。どちらにしろわくわくするストーリ展開で一気読み。原田宗典のエッセイはつまらないけど小説は実に切なくほろ苦く味がある。
掏摸を題材にしたジェームズコバーンの映画があってすごく印象的であるのだが、それに通じる読後の爽快感がある。恐らく自分にもそのような技術?があったらなあ、なんて願望があるかもしれない。
登場人物の名前がカタカナ表記なのは嫌いだ。どうしてだろうか。それ以外は、本当によくできていると思うのに。
(お勧め度:90/100)1998/05/17登録
- 「連鎖」
真保裕一、講談社文庫
立て続けに真保裕一を読んでいる。読み始めると止められない魅力がある。この「連鎖」は厚生省食品衛生監視員というマイナーなこれまた小役人が主人公である。昨今とかく問題の多い厚生省であるがその体質を見事に先取りした内容で小気味がよい。
しかし、後半、複雑に絡み合う展開にやや戸惑いを感じる。江戸川乱歩賞受賞作品であるが、以後の真保裕一の活躍をみると、この小説を読んで受賞させた乱歩賞選考委員には眼力に恐れ入る。
(お勧め度:70/100)1998/05/17登録
- 「震源」
真保裕一、講談社文庫
東海地震の中心地に住む者として、この書名は見過ごせない。が、内容は鹿児島を中心とした火山性地震を題材としたスパイが暗躍する大掛かりなサスペンス。小役人小説とも俗に言われる主人公の活躍が小役人を超えていてやや不自然。
けれども次から次へと起こる事件がどんどん読者を引き込み、あっという間に読み終えてしまう。それは登場人物の細やかな性格付けがこの小説を生き生きさせるのだろう。
(お勧め度:70/100)1998/05/17登録
- 「OUT」
桐野夏生、講談社
週刊誌や書評本などで評価が高かった小説であるが、私はどうも好みではない。読み終わった後の爽快感や充実感がないのだ。もちろん筆力はあるし、飽きさせず、あっという間に読み終わってしまうのだが、どうも非現実的な気がする。
もっとも新聞等の記事を読めば、この小説のような犯罪は実際に行われているようでゾクッとするのだが、
それにしてもこの小説のような展開になるのかなあと違和感を感じる。しかし、この主婦等の描写と正確の位置付けの表現は的確であり、さすが乱歩賞作家だと思わせる。
(お勧め度:78/100)1998/05/13登録
- 「取引」
真保裕一、講談社文庫
知らぬ間に文庫本も高くなりました。この本は講談社文庫なのだが、854円なのだ。それだけに読み応えがなくては困るのだ。勝手な言い分であるが。
私のように社会事情に疎い人間には、ちょっと尻込みをしてしまう感があるODAとか公正取引委員会とかが舞台である推理サスペンス。が、読んでいけばぐぐっと引き込まれる面白さがあり、楽しい。
フィリピンでの舞台がかなりの量を占めるが、かなり現地で取材をしたのであろう、よく書き込んであり描写が密である。作者の努力に拍手を送りたい。
(お勧め度:87/100)1998/05/13登録
- 「パラレルワールド・ラブストーリー」
東野圭吾、講談社文庫
一気に読ませる筆力あり。この類の小説は、どうして切なく悲しいのだろうか。ダニエル・キースの『アルジャーノンに花束を』なんかも読んでいて涙が出てきそうになるのだが、この小説も涙は出ないものの主人公の気持がよくわかり切なくなる。
複雑に絡み合った記憶と真実を少しずつ紐解いていく手法は読む手を休めさせない。
文庫本の解説が久しぶりに名前を見かけたという感じの新井素子というのがよい。
(お勧め度:90/100)1998/05/13登録
- 「猛禽の宴」
楡周平、宝島社
楡周平の3作目。これは「Cの福音」の続編になるが、これを含めて3作すべて1つのシリーズになるそうだ。今回は、あまり大きな展開は無く、この作品だけを読んだのでは、足りなく感じるだろう。一つのシリーズものの次への展開に必要な1節という感じ。
この本の表記が気になる。たとえば武器の名称だが「ヘッケラー&コッホMP−5SD3」を縦書きの為か、「ヘッケラー&コッホMP−五SD三」と漢数字を使用するのだ。何か気持ちが悪い。それと舞台がアメリカなので、会話に英語をカナ表記する部分が多くて、やはり気持ち悪い。「ドン・シュー」とか「・・・デム」「シット!」とか。
あっという間に読んでしまうテンポはあるのだが、なんかもったいない感じがするので、次回作品は、もっと大立ち回りをしてワクワクさせてもらいたい。期待する。
(お薦め度:70/100)1998/02/05登録
- 「突入」
平山和充、新声社
これは期待外れ。カバーの写真に騙された。作者は、フォト・ジャーナリストなのだが、いくらフォト・・・としてもジャーナリストなのだから、もう少し文章の勉強をして頂きたい。誠に読みにくいし、内容があちこち飛び、思い付きで書いているのかなと疑いたくなる。
副題に「ペルー・リマ日本大使館公邸人質事件 もうひとつの真実」とあるが、最後まで読んでも、なにも真実は出てこず、内容は、新聞やその他報道で報じられた内容にから何も目新しいものはなく、欠伸しながら読んでしまった。 (お薦め度:40/100)1998/02/05登録
- 「レディ・ジョーカー」
高村薫、毎日新聞社
待ちに待った高村薫の新作が、企業の社長の誘拐事件だというので、姿勢を正して読み始めた。相変わらず硬派な緻密な筆で緻密に進んで行く無い様に脱帽。期待を裏切らない。しかも、あの合田刑事が出てくるのだ。これまた待っていたぞ、という感じ。期待はますます膨らむ。
この小説は、誘拐だけではなく、企業の裏側と経済社会の暗闇部分まで描いているので、報道記事を呼んでいるような現実感(作り物という感じではなく)がひしひしと感じる。おそらく、企業舎弟や真っ黒い政治家などは、こんなんだろうななんて納得してしまう説得力がある。
警察・検察・報道・証券会社・部落問題など複雑に絡み合って、終局に向かうのだが、最後は以外な結果に終わるのが、私にとっては残念。どちらかといえば、完璧な解決を期待したのだが、これまた続編にも繋がりそうな終わり方で、ややスッキリしない。まあ、これから高村薫がどう書くか、という別の期待も生まれてくるのだが。どちらにしろ、8ポ2段組約900ページの内容は、読むに値することは間違いない。
(お薦め度:90/100)1998/02/05登録
- 「真剣師 小池重明」
団鬼六、幻冬社アウトロー文庫
”新宿の殺し屋”と呼ばれた賭け将棋の猛者、小池重明の話。実在の人物。
とにかくプロよりも強いといわれ、何人もの現役プロが負けているのだ。その荒唐無稽な生活がゆえにプロにはなれず、数々の職業を転々としながら、賭け将棋をして、勝ちつづけたのだ。棋士は、たいがい麻雀とギャンブルに強いものだが、この小池重明は、賭け将棋だけに強いのである。
団鬼六が、実際に付き合いもしたし面倒も見た人物だけあり、妙に人間臭く描かれているが、プロとか社会的に認められたアマチャンピオンとかを負かすシーンは爽快でもある。
この幻冬社アウトロー文庫の中には、この小池重明がプロとかと戦ってきた棋譜が解説付きで出版されている。
(お薦め度:90/100)1998/01/05登録
- 「イン・ザ・ミソスープ」
村上龍、読売新聞社刊
いまだ神戸の連続殺傷事件の記憶は新しい。村上龍は、偶然この小説と同時進行でこの事件の報道を見る。偶然という言葉が信じられなくなるほど、この本の登場人物は、神戸の事件の犯人と同じように意味の無い殺人を繰り返す。
村上龍の作品では、久々に読み込めるストーリだった。神戸の事件が無くても、この小説を読めば同様の感想をもったであろう。それほど現実と小説が交錯している。神戸の事件は面白いわけではないが、この本は、無闇にリアルな描写とテンポのよさで面白さが倍増している。という感想は、村上龍をますます憂鬱にさせるだろう。
(お薦め度:90/100)1997/12/10登録
- 「空へ」
ジョン・クラカワー、文藝春秋刊
1996年の一度に多数の死者を出したエベレスト登山隊に参加した作者が、その悲劇の原因を時間を追って詳しく再現した本。作者は元クライマーでもあり、現在は文筆業でもあるので、専門的知識と表現力を兼ね備えているので、内容は実にリアルで正確である。
この遭難は、日本人の難波さんも参加していて、その時の新聞記事は随分と印象深い。その後のインド隊遭難に関する日本隊の対応の記事も記憶に新しい。それら新聞記事からでは到底知ることが出来ない状況や各々の心理を、この本は詳細に書かれている。
面白いといっては不謹慎かもしれないが、小説のように読める良質のルポ。全米でも爆発的ベストセラーと帯に書かれているが、それも納得できる内容。本当に面白かった。
(お薦め度:90/100)1997/12/07登録
- 「別冊宝島
323:競馬PATやりこみ読本」、宝島社刊
PATに関する別冊宝島は何冊か出ているが、これは Windows95 に対応したパソコン版を中心に書かれている最新版。PAT会員に当選していない人はあまり読んでも意味内無いが、PAT会員に当選したときは、
機器の選択などの助けにはなる。
これだけでは内容不足であるので、競馬関係のホームページ情報とかJRA-VANや予想ソフトのツールの類を付け加えてある。それにしてもこの本、1200円は値段が高い。パソコン画面を取り込んでいるため、紙面に上質紙を使っているためであろうが、それにしても内容からしてこの値段は少し躊躇する。
(お薦め度:45/100)1997/12/06登録
- 「春風無刀流」
津本陽著、中央公論社
再読。幕末三舟の一人、山岡鉄舟の伝記。勝海舟とも親交があり静岡にもなじみが深い人であるので、気になる。鉄舟は、幕末の人間にしては、海舟も同じだが血なまぐさくなく好ましい。
剣術、禅、書などいろいろな分野で名を残した人で、私などの腐りきった生活人から見ると神様のよう。
ほんとうに100年前の人たちの精進の仕方は想像に絶する。
小説としてみると、この本は面白くないけど(小説の形にはなっていない)、山岡鉄舟を知る本としては、
大変わかりやすくお勧め。
(お薦め度:66/100)1997/11/29登録
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