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書籍寸評

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書籍寸評(5) 1998年09月以降

 お金がないので、なかなか本が買えない。雑誌の購入を我慢して単行本に資金を回しているが、面白い本ほど読了スピードは速くなり、次の本が必要になる。
 逆につまらない本に当たった時は、ひねり出したお金様に申し訳なく、かつ、なかなか読み終わらないので(気がのらないので)イライラ度が倍増する。まして、次に読みたい本を購入して控えているときなど、もうやりきれない。


  • 「トレーナー」 織田淳太郎、中央公論社、1900円

     私はボクシングが好きである。天才ボクサーと世界チャンピオンが絡むミステリーなんてとわくわくして読んだモノであるが、残念。ボクサーとトレーナーの関係あたりはうまくかかれているのに、殺意に至る経緯とか内容があまりにも下司というか、後味が悪く、帯にかかれているような「感動ミステリー」という感じではない。
     (お勧め度:60/100)1999/4/1登録

  • 「秘密」 東野圭吾、文藝春秋、1950円

     作者は、このような突然な理不尽な境遇に置かれた主人公をやさしく切ないラストにまとめ上げるのが巧みである。人間の描写がうまい。
     如何にも自分の身にも起こりそうな普通の家庭の設定から事件が起こりぐいぐいと作者の思う方向に引っ張られ、感情移入させていく。いつの間にか、自分の家族と登場人物が混ざり合い、息もつかせない。この感覚が心地よい。
     作者の江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作『放課後』の後味の悪い印象はもう完全に払拭された。安心して手に取ることの出来る作者の一人だ。
     次作にも期待したい。
     (お勧め度:95/100)1999/3/29登録

  • 「ソニーの革命児たち」 朝倉怜士、IDGコミュニケーションズ、1700円

     帯の文句を書けばすべてという感じである。
     「創業4年で売上高7000億円を稼いだ驚異のサラリーマン集団、史上最強のベンチャー、ソニー【プレイステーション】世界制覇の全軌跡」
     しかしすごいね、この拘りと行動力。このくらい確信的でないと世界制覇は出来ないのであろうな。才能のある人間の自信はすごい。
     次のプレイステーションも、これまたものすごいらしいけど、こういうのってソニーという会社の体質なんだろう。恐るべし。
     (お勧め度:80/100)1999/3/27登録

  • 「三浦和義氏からの手紙」 家田荘子、幻冬社アウトロー文庫、762円

     あの三浦さんである。ロス疑惑。この三浦さんと作者との手紙でのやり取りをまとめたものであるが、三浦さんってすごいのですよね、これを読むと。とにかくこの作者とのレベル差がひどくて三浦さんもかなりムッときている部分も感じられる。なんというか、無神経なんですよね。
     三浦さんは拘置所内で本を4000冊も持っていて、ボールペンなど3日でインクが無くなるほど文章を作る。毎月の郵便代は20万円とか。世の中のことを普通の人以上に拘置所内で把握しているのです。何が辛いかときかれて、ワープロ(パソコン)が使えないこととあるがよーくその気持ちは分かります。そうでしょうね、このタイプの人は。
     とにかく作者のことはともかくとして三浦さんの話(手紙)は面白い。
     (お勧め度:90/100)1999/3/17登録

  • 「小説上杉鷹山(上・下)」 童門冬二、学陽書房人物文庫、660円、660円

     不況が続く中、なぜか会社経営者に人気が高い上杉鷹山、彼の経営手腕とリーダーシップに憧れてのことであろうかと思うが、そんなことは百も承知で、読んでみてなるほどと判ったような気になって安心するだけであろうと思う。
     まあ、それは別として、この鷹山という人物、確かにすごい人だったようで、この小説も面白い。ケネディ大統領も尊敬した人。私も嫌いではない、話題性の高い人。
     (お勧め度:75/100)1999/3/16登録

  • 「蒼氷・神々の岩壁」 新田次郎、新潮文庫、520円

     作者が富士山測候所に勤務していたこともあって、富士山を題材とした小説がいくつかある。その中でも代表的なものが「蒼氷」である。
     この本は、今回再読であるが、富士山冬の山頂のイメージは、この本を最初に読んだときのイメージがいまだにある。生半可なところではないぞ、という感じ。とにかくマッチ箱大の石が水平に飛ぶほどの強風、想像がつかない。内容はべつとしてこういった知識を披露してくれるだけでも読む価値があるものだ。
    (お勧め度:70/100)1999/2/12登録

  • 「スーパー書斎の遊技術」 山根一眞、文春文庫、413円

     これは情報整理にまつわるこだわりのエッセイ集。この本も今となっては内容が古くなってしまって、この分野の時代の流れが速いことを感じさせられるのだが、当時の苦労とそれを自慢そうに書いているのが 面白い。今となっては滑稽だが。
     作者は何でも単位計算する癖がある。たとえば、1センチあたりとか1グラム当たりとかにして、これは小さいとか軽いとかで比較対照とするのだ。金にも換算する。確かにわかりやすいのだけれど、それだけではないように感じる。本当だったら、金に数字に表れない部分の価値を見出して比較すればよいと思うのだけれど。少し変わっている。
     当時に比べると本当に、今は恵まれているなあと思う。情報に関する技術の進歩は素晴らしい。良い時代であるなあ。
    (お勧め度:70/100)1998/10/19登録

  • 「ものぐさ町長の泣き笑い山歩る記」 大石哲司、800円

     静岡県榛原町長の自費出版。捨て犬「ひらり」と健康のために始めた山歩きを絡めて作者の日常のことをエッセイ風に書き綴ったもの。時系列に出来事を順に追った書き方で素人(失礼)の文章にしては気取ったところもなく気負ったところもなく読みやすく理解もしやすい。
     山登りの部分については、その失敗も含めて自分同じようなことを経験しているので大変共感できるところがある。首長の書いたものと構えて読むほどのことがない。
     ワープロを使って文章を書いたそうだが、句点と改行が多いのが玉に瑕。
    (お勧め度:85/100)1998/10/15登録

  • 「雪の炎」 新田次郎、文春文庫、460円

     昭和44年「女性自身」に連載されたものを書き改めたもの。まさに山岳ミステリーという感じの内容で、新田次郎の作品にしては企業問題などにも触れていて、エンターテイメントぽい。谷川岳が舞台なので緊張感がある。やや結末に向けて強引なストーリ展開であるが、期待を裏切らなくて面白い。
     しかしここに出てくる女性というのが30年もたった今でも通じる性格で、こういった女性特有のエゴというか我が侭な部分は変わらないのだなあと感じてしまった。
     作者は既に亡くなっているが、明治生まれなのですねえ、驚きました。
    (お勧め度:70/100)1998/10/15登録

  • 「プラレールのすべて」 アールエムモデルズ9月号増刊、980円

     40年も販売し続けているプラレールの特集。大人向けの本である。
     しかしトミーという会社はしつこい。なんと初期のモデルが現在販売しているレールの規格にあっていてそのまま使えるのだ。車両連結の部分も当時のまま現在も残っている。進歩がないというかユーザーを大切にしているというか。マニアにとっては規格を維持すると言うことは、本当にありがたいことですね。
     何の分野にもマニアはいるものですが、この本で紹介されているマニアもすごい人がいます。巨大レイアウトはセッティングするだけで20時間もかかり、4200両の車両をもっているとか。壮観です。
     意外に大人も遊んでしまうプラレールの魅力いっぱいです。
    (お勧め度:78/100)1998/10/06登録

  • 「冬山の掟」 新田次郎、文春文庫、388円

     かなり初期の短編小説集。中身は時代を感じさせるものがあるが、登山者の心理を始め、遭難に至る経過など、そういったものは今と何も変わらない。したがってその雰囲気とか気持ちは手に取るように伝わり緊張感を得ることが出来る。
     後の傑作の数々の基礎をなす小説ばかりで興味深い。
     (お勧め度:80/100)1998/10/04登録

  • 「スーパー書斎の仕事術」 山根一眞、文春文庫、420円

     ずいぶんと昔に読んだ本であるが、文春文庫に増補改訂版があったので再読した。
    私はこの類の本が好きで、あまりすぐに役に立つものではないが、似たような本を数多く読んでいると、なんとなく情報整理の基本というかコツがわかってくる。
     その昔、「知的生産の技術」を読んでこんな面白い本があったのかと思ったものであるが、この本を最初に読んだときは、世の中にはやっぱりこういう凝り性の人がいるんだなと、面白く読んだ覚えがある。
     今読んでみると、増補改訂版とはいえ、すべてが古くむしろこんな苦労をしてと微笑ましい感じもするが、当時としては最先端を行っていたんでしょうね。時代は変わりました。すぐに内容が古くなってしまう分野であるがそれはそれで面白く読めるのがいい。
     (お勧め度:70/100)1998/10/04登録

  • 「剣岳<点の記>」 新田次郎、文春文庫、448円

     北アルプス剱岳の山頂に三角点埋設の至上命令を受けた測量官の苦闘を描いた山岳小説。日露戦争直後の話で、当時、剱岳は日本で最後の未踏峰と言われていた。
     もちろん登山道もなく、現代のような素晴らしい装備もない時代の登山は、困難を極めた。
     新田次郎の山岳小説はほとんど読み終わったと思っていたのだけれど、まだまだこんなにおもしろい小説が残っていたとは、嬉しい限りである。
     ああ、久しぶりに山に登りたい。
     (お勧め度:90/100)1998/09/30登録

  • 「ぢんぢんぢん」 花村萬月、祥伝社、2940円

     この過激な芥川賞、吉川英治文学新人賞受賞作家である花村萬月が気合を入れて書き上げたヒモ修行小説(なんだそりゃ)。
     ここまで書き込む筆力は凄いものがある。取材とかそういう調査もかなりやっていると感じる内容で、結構作者はこれを書き上げるのには楽しんだのではと想像する。
     とにかく面白い!気合を入れて読んでみよう。
     (お勧め度:92/100)1998/09/23登録

  • 「レッド」 今野敏、文藝春秋、1571円

     「触発」で完全にはまった遅筆堂は、この本を見つけて借金をして即効で買ったのだが、残念(泣)。期待が大きすぎたか。
     何だか導入部から中盤までは、松本清張の社会派ミステリーを読んでいるようだった。なんというか質素な内容なんですよね。それが最後は米軍特殊部隊との闘いになるのも飛躍しすぎという感じで、結局、全体をつまらなくしている。
     あまりにも話を広げすぎた悪い例の見本(くどい)のようだ。
     借金して買ったのに・・・
     (お勧め度:50/100)1998/09/23登録

  • 「賭ける魂」 月本裕、情報センター出版局、1900円

     情報センター出版局の本の帯はたいへんうまい。この場合も完全に帯をみてフラフラと購入してしまった。

     「日本の株式で巨万の富を築き競馬で200億円負けた男」

     とあれば読みたくなるでしょ。確かにその通りなのだけれど、これだけの男であればもっと魅力的に書いてもらいたかった。
     自分の期待との食い違いにより残念な構成であった。ラムスデンを時系列で追った小説風にすれば読みやすくストーリに集中できたであろう。話はあっちこっちに、内容は作者の私的なことまで及んでいるので集中できない。題材はいいのだ。
     結局、最後までなんだか判らないような話の進め方で残念。
     次作に期待したい
     ・・・「科学者」参照
    (お勧め度:60/100)1998/09/23登録

  • 「リミット」 野沢尚、講談社、1800円

     「破線のマリス」で江戸川乱歩賞を受賞した作者の受賞第1作目である。かなり気合が入っている。
     組織から外れた女刑事の活躍を描いているのだが、事件が子供の誘拐であるので、2歳と0歳の子供を抱える私としては実に力が入るのである。
     最近は、警察を舞台にした良質の小説が多いのであるが、これもしかりで赤川次郎が描く警察とは違って実に陰湿で殺伐とした警察が描かれている。
     展開もテンポがよく飽きさせず、あっという間に読了してしまった。難点は犯人側の動機や設定がなんとも漫画的でどんなものかと感じた。
    (お勧め度:80/100)1998/09/04登録

  • 「知覧特別攻撃隊」 村永薫、ジャブラン、1000円

     今年の5月に鹿児島県知覧町の特攻記念館に行った購入した 書籍。
     私はこういった話は滅法弱い。忠臣蔵もそうだし、会津白虎隊もそうだし備中高松城の水攻めもそうだし、キグチコヘイも同じである。
     特攻記念館では 5分で平常でいることが絶えられなくなり、目から涙がウルウルしてきて、それを隠すために、トイレに行ったりして、また中に入ってぐぐっときて、15分ほどで館外に出てしまった。そのかわりこの本を購入して家で読んでみたのだが結局同じことで、家でもウルウルしてくるのである。
     みなこの本を読んで今の世の中の幸せに感謝し、過去を知るべきである。私も随分と反省をしなければならない。
    (お勧め度:100/100)連続100点だ! 1998/09/04登録

  • 「ミニヤコンカ奇跡の生還」 松田宏也、山と渓谷社、1850円

     今だこの時の新聞記事を覚えている。ミニヤコンカ頂上直下で遭難と判断され、ベースキャンプまで撤退されてしまった著者は、途中友人を失いながらも強靭な精神力で這って下山を続け、ついには現地の人に発見される、というものである。
     その結果、両足首と両手の全指を失った。しかし、生きて日本に帰りこの手記を書き上げた。
     途中途中で挿入されている写真が痛ましく、その時を想像させられる。寒さと飢えまで感じそうである。
     以前、手元にないのではっきり書名は思い出せないが、タカ号遭難で生還した方との対談を載せた本を読んだが、この本は、それ以上に当時のことを克明に書いてある。というのも実際書かれたのは、遭難後日本に帰ってきてそれほど経たないうちに書かれているからであろう。小説でないのが本当にすごいと思う。
    (お勧め度:100/100)1998/09/04登録

  • 「万馬券二季報 メガトン8&9合体号」 競馬主義編集部、自由国民社、1850円

     昨年1年間の万馬券を取った人へのインタビューとそのレースの解説である。丁寧に必ず馬券の写真がある。最初のページに乗っている人は、1日に900万円も勝っている。すごい。
     この幸せな万馬券取得者の意外に間の抜けたコメントと、それにチャチャを入れながら意外になるほどと思わせる解説には、危険なものを感じる。なぜなら、今までの馬券購入の考え方がガラリと買えさせられそうなのである。困ったものであります。
     とにかく中身は勉強になります。万馬券を狙わなくても、競馬とはどういうものかということが、普通の人の言葉で表現されています。競馬の読み物として稀有の面白さです。
    (お勧め度:90/100)1998/09/04登録